小学生ママ

努力できるかどうかは生まれつき?「努力脳」ってあるの?

これまで読者のお悩みを中心に書いてきましたが、今話題の「非認知能力」について、このコラムでも月1回、取り上げてみたいと思います。

エジソンは、「努力脳」だったのかも…?

子どもを見ていて、「どうして上の子は努力するのに、下の子は努力しないのだろう?」と思ったことはありませんか。また逆のパターンで「上の子は努力しないのに、下の子は努力する」というのもあるかと思います。

トーマス・エジソンは、「天才は1%のひらめきと99%の努力である」という有名な言葉を残したことで知られています。以前も紹介しましたが、エジソンは小学生の頃、少しも先生の言うことを聞かなかったそうです。みんなが当たり前と思っていることが気になって仕方ないのです。
たとえば授業中「Aはなぜエー(A)と読んで、ピー(P)とは読まないのですか?」などと質問するのです。あまりに「なぜ?」「なぜだろう?」と聞くので、授業が進みません。ある日、授業中に先生から「君の頭は腐っている」と言われ、教室を飛び出し、二度と学校へ行かなったそうです。

エジソンの書いた手紙が残っていますが、スペル間違いが多くあります。あのエジソンも文を書くことは苦手だったようですが、とにかく実験が好きで、のちに蓄音機や電灯をはじめ100以上の発明をしています。今の時代のなら学習障害と言われたかもしれません。しかしながら見方を変えれば、「興味のあることには、いくらでも努力できる人」であった、「努力する才能をもっていた」と言えるのではないでしょうか。

努力できるかどうかは、生まれつき決まっている?

ここで興味深い研究を紹介します。米テネシー州、ヴァンダービルト大学のマイケル・トレッドウェイが率いる研究チームの研究論文が、2012年の『Journal of Neuroscience』誌に発表されました。それは「生まれつきの『努力脳』がある」というものでした。
人間には、どんなに退屈な単純作業であっても、最後までやり遂げようとする意志の強い人と、途中であきらめてしまう人がいます。人間の内側ではつねに何かをやり遂げようとする「動機の維持」と、つまらないから逃れたいという「動機の放棄」がせめぎあっています。

マイケル・トレッドウェイの研究チームは、被験者25人に、自分の利き手で7秒間に30回ボタンを押す「簡単な課題」か、利き手でないほうの小指で21秒間に100回ボタンを押す「難しい課題」のどちらを選ぶか選択させました。

どちらにしても死ぬほど退屈な作業です。「難しい課題」の報酬は「簡単な課題」よりは高いが、確実に得られるとは限らないということも告げられたそうです。

研究の結果、ボタンを押すのを途中でやめてしまう人と、たとえ小指が痛くなってもボタンを押し続ける人の違いが明らかになりました。簡単にまとめると、何かを行うことで生じる報酬や成果を感じる脳の機能が高く、かつ損得を冷静に計算する機能が鈍い人は「努力できる人」になり、逆に何かを行うことで生じる報酬や成果を感じる脳の機能が弱く、損得を冷静に計算できる人が「努力できない人」になるということです。つまり、努力できるかできないかは、本人の頑張りというよりも、脳の構造の違いによるところが大きいというのです。

成功者がもつ共通点「グリット」―非認知能力

この「生まれつきの『努力脳』がある」という考え方とはまったく反対の意見をもつ学者もいます。それは、ペンシルバニア大学心理学教授のアンジェラ・リー・ダックワースという女性学者です。

ダックワース氏は軍事教育学校、国際的な単語つづり大会、教育現場の先生、一般企業の4つの異なる調査対象を研究した結果、成功を収める人たちには、共通してあるひとつの性格をもっていることが明らかになったのです。それは、高学歴や知能の高さではありませんでした。外見のよさでも、身体的能力の差でもありません。これこそが「グリット」と呼ばれるものです。

「グリット」とは、物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり遂げる力のことです。
これは、ここ最近言われている「非認知能力」という考え方と似ています。「非認知能力」とは、目標に向かって頑張る力、ほかの人とうまく関わる力、感情をコントロールする力などのことを言います。

「非認知能力」を育てるのに大事なこと

「生まれつきの『努力脳』がある」と唱えるトレッドウェイ氏は、努力が苦手な人が努力するための方法を3つ提起しています。

  1. 「努力することで、こうしたことが得られるよ」と、自分に強く言い聞かせる。その時のごほうびを頭の中で映像化する
  2. 楽しいと思い、飽きないで続けられる工夫をする
  3. ネガティブ感情を活かす(「いい点数をとって、お父さんをうならせてやる」など)

「グリット」を提唱しているダックワース氏は、「グロースマインド・セット」という考え方を提起しています。これは「知能は生まれつき固定されたものではなく、後天性のもの、努力を重ねることによって変えることができるものである」という考え方を教え込み、その上で失敗を恐れず、さまざまなことに挑戦させてみるということです。

一見矛盾した学説を提唱している2人ですが、「『努力すれば報われる』と言い聞かせる」ところは共通しています。

私自身が大事だと思うのは「失敗から正しく学ぶことを教える」です。失敗しても、怒ったり、責めたりしないことです。そして「どうして失敗したのかな?」と、一緒に考えることです。
「『非認知能力』を育てる」というのは、非常に難しい問題です。5月の2回目では、具体的な方法を丁寧にお伝えしたいと考えていますので、お楽しみに!

 
【新刊】
新刊「『いじめ・自殺事件』の深層を考える-岩手県矢巾町『いじめ・自殺』を中心として-」(本の泉社、1620円)発売中。

先生への質問受付中

プロフィール

増田修治先生

増田修治先生 
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。
1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

関連記事

関連記事

キーワード検索

公式キャラクター

公式キャラクター

幼稚園関連サイト

  • こどもがまんなかPROJECT
あんふぁんWebは子育てママを応援しています。