小学生ママ

小1の娘、引き算の暗算ができず、つまずいています。どんな方法がありますか?

いくら暗算カードをやっても、一桁の暗算ができるようになりません。つい語気が荒くなって、怒ってしまいます。どうしたらいいでしょうか?


小1の娘は一桁暗算カードを、夏休みも毎日やっていましたが、未だに手を使い、「9-1」など、1を引くことすら悩みます。夏休み明けは二桁の計算に入っているのに、一桁を間違えるから、教えながら語気が荒く怒ってしまいます…。
繰り返しているうちにできるようになるかなと毎日やっていますが、それではムリな気がします。何か根本的な原因があるのでしょうか?(高葵おかん)
数は集合数であることを理解させるのが早道です


よく「1から100まで数えられたら、お風呂をあがっていいよ」などと言って、子どもに数を暗唱させることがあると思います。正直、この方法はあまりおすすめできません。なぜなら、これは順序数だからです。

算数で大事なことは、「数は集合数である」ということをわからせることです。つまり、キャラメルが3個あった時に、「3」という集合であると認識することです。例えば「ケーキ1個とサッカーボールが3個あります。合わせていくつでしょう?」という問題は成立するでしょうか。これは成立しないのです。同じものでなければ、集合として考えられないからです。答えは「ケーキ1個とボール3個」です。

同様に「ケーキが1個とクッキーが3個あります。合わせていくつでしょう?」という問題も成立しないのです。ただし「ケーキ1個とクッキーが3個あります。お菓子は全部でいくつでしょう?」というのは成立するのです。つまり「お菓子」という集合として考えれば、足すことができるのです。こうした「集合」という概念が育っていることが、算数を理解する第一歩であることを、まずわかってほしいと思います。

1年生の今からでも大丈夫ですし、小学校に入る前にぜひともやってもらいたいことがあります。それは「おはじき3個」があった時に、「1・2・3」と数えるのではなく、「3」と言えるようにしてほしいのです。集まった集合として、一瞬で「〇個」と言えるように練習してください。また、おはじきがあったら、「4個、取ってみて!」と言った時に、数えるのではなく一瞬でパッと取れるように練習してください。必ず算数がわかるようになっていきます。

子どもの数の概念育ち
スイスの心理学者のピアジェ(Jean Piaget 1896~1980)が、4~5歳の子を対象に、ある実験をしました。同じ数の花と花びんを用意して、花びんに花を1本ずつ挿していきます。「花の数と花びんの数は同じですか?」と子ども達に聞くと、「同じ」と答えます。けれど、花びんから花を抜いて、一束にして同じ質問をすると、「花びんが多い」と答える子がいます。さっきは同じ数だと言ったのに、寄せ集めて花の占める広さが変われば、少なくなったと思ってしまうのです。

つまり4~5歳くらいは、こうした数の概念しかもっていないのです。これが6歳くらいになると「同じ」とわかるようになるので、世界各国で義務教育が始まるのも6歳頃からになっているのです。

つまり「数の概念」というのは、学ばなければ獲得できない力だということです。そういう子ども達にどうやって数を教えるのかというのが、小学校低学年の大きな目的なのです。

ちょっとおもしろい話があります。ずいぶん前ですが、ソニーのポータブルオーディオプレーヤーのCMに出ていた「ニカウさん」というカラハリ砂漠の先住民族の方がいます。その方の数の数え方がおもしろいのです。「1・2・3・いっぱい」しかないと言うのです。理由は「狩りに出たら獲物は単独か、ペアか、親子3頭か、群れかしかないから4以上の数字は意味がない」からだそうです。

また、数学の歴史の話になってしまいますが、ニカウさんが言っているように、最初の数の概念は「1・2・3・いっぱい」という形で、3までしかなかったのです。「人間はパッと答えられるのは3まで」という認識があったからです。しかしながら、小さな集落から、村や町になっていくにしたがって、「1・2・3・いっぱい」では、間に合わなくなってしまったのです。そうして、数の概念が広がっていったのです。

つまり、算数をしっかりわからせたかったら、こうした「数の概念の歴史」を踏まえて教えていくということです。つまり4歳ぐらいまでには、「3」までの数がきちんとわかるようにしておくことが大事であり、小学校入学までには10ぐらいまでの数が、短時間でわかるようにしておく必要があるのです。

補数を理解させる
1年生での数の計算や、簡単な暗算ができない子どもに共通していることは、補数がわからないことです。補数というのは、「あといくつで10になるか」という数のことです。1の補数は9ですし、7の補数は3です。

例えば、「9+7はいくつですか?」という問題の場合は、「9の補数は1だから、7から1をもらって10、残りの6を足して16」という形で計算します。これを、「補数法」と言います。

そのほかには「5・2進法」(ごにしんほう)というのもあります。これは、9=5+4、7=5+2で、55=10、4+2=6、10+6=16という方法です。この方法で計算している大人もいますが、「補数法」の方が基本的にはラクです。

「補数」を覚えさせるのに、よい方法があります。まずは、うちわを5本用意して下さい。片面には1、その反対側には9を書きます。そして「1と言ったら…」と親が聞き、「9」と子どもが答えるのです。「1と9」「2と8」「3と7」「4と6」「5と5」の5つを用意すればいいです。これをすぐに言えるように繰り返して練習させてください(もちろん、うちわでなくてもいいです)。

こうした繰り返しによって、補数が一瞬で言えるようになれば、計算がしっかりできるようになります。それでもわからなかったら、「8+3」だったら、8のうちわを見せ、あといくつで10になるかを聞き、2と答えさせ、「3から2をもらえば10になるよね。3から2をもらうと、残りは1になるから、10+1は11だよね」と、計算の仕組みをきちんと教えてあげることです。

くり下がりの引き算も、「13-4の時は、3から4は引けないから、10から4を引くと6、その6と3を足すと9になるよね」と教えてあげてください。

「補数」「数の繰り上がり」「数のくり下がり」などがわかっていないのに、繰り返し暗算カードをやっても効果はありません。大事なことは、「子どものわからなさ」を責めるのではなく、「なぜわからないのか?」を一緒に考えるようにしていくことなのです。

 
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プロフィール

増田修治先生

増田修治先生 
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。
1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

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