子育て・しつけ

「ウソをついたらダメでしょ!」と子どもを叱るなど、普段私たちはウソは〝悪いもの〞と捉えています。
でも発達の視点から見ると、ウソがつけるのはコミュニケーションに必要な〝言葉の力〞と〝心を理解する力〞が育っていることの表れです。
普段はネガティブな捉え方をしがちなウソを発達の視点から見ていきましょう。
東京学芸大学教授の松井智子さんに聞きました。

お話を聞いたのは
松井智子さん

まつい・ともこ 東京学芸大学教授。専門は認知科学、語用論。著書「子どものうそ、大人の皮肉 ことばのオモテとウラがわかるには」(岩波書店)には、子どもがどのようなプロセスを経てウソがつけるようになっていくのかが、分かりやすく書かれている。小学3年男の子のママ。

※発達には個人差があるので
年齢はあくまで目安です

3歳

相手を欺くためのウソはつけないしつかれても分からない

ウソのほとんどは怒られたくないという反射的な反応

4〜5歳

単純なウソならつけるし理解もできるようになる

他者との関わりが増えて、言葉の力も発達しウソをつけるようになるが相手を欺こうという気はない

5〜6歳

相手を欺く意図は薄くつじつまを合わせるのはまだまだ未熟

パパがママに話せばすぐに事実がバレることには頭が回らない

7〜8歳

計画性のあるウソや相手を思いやるウソもつけるようになる

つじつまを合わせられるようになり前についたウソを持続させることもできる

9歳〜

ウソよりも難しい皮肉が理解できるようになる

まずは皮肉を言われたことを理解できるようになり、その後、自分で皮肉を言えるようになってくる

2つの能力が育って初めてウソがつける

年齢によるウソの発達を調べる実験に、次のようなものがあります。

大人が子どもの前にふたのある箱を置き、「中身を見ないでね」と言って部屋を出ていきます。3歳児は我慢できずに箱を開けてしまいますが、部屋に戻ってきた大人に「中身を見た?」と聞かれると、「見てない」と答えます。でも「箱の中に何が入っていた?」と聞かれると、「ぬいぐるみ」と正直に答えてしまいます。「見ていないから分からない」とつじつまを合わせられるようになるのは、かなり先、7歳ごろです。

3歳児の「見てない」という答えは、ウソと言うよりも怒られたくないという反射的な反応です。相手を欺こうという意図はまったくないので、「何が入っていた?」と別の角度から質問されると、自分の知っている事実を答えてしまいます。

実は、相手を欺くウソをつくには2つの力が必要です。一つは、現実(本当のこと)と非現実(ウソのこと)の2つを同時に頭の中に思い浮かべられる力。もう一つは、現実を話したい欲求を抑えるための抑制能力です。

計画性のあるウソは7、8歳から

3歳児はまだ2つのことを同時に思い浮かべられませんが、4歳児になると2つのことを思い浮かべる力も、抑制能力も育ってきます。そのため、単純なウソならば言えるし、相手がウソを言っていることも理解できるようになります。

5、6歳になると、4歳よりもウソらしいウソがつけるようになります。ただその結果として、どんなことが起こるのか想像できませんし、計画性のあるウソもつけません。そうしたことがある程度できるようになるのは7、8歳以降です。

ウソよりも能力が必要な〝皮肉〞

〝ウソ〞に似て非なるものに〝皮肉〞があります。ウソをつくのと同じ力が必要ですが、皮肉の方が難しく理解できるようになるのは9歳ごろからです。皮肉を言われた場合、発せられた言葉通りに受け取ると、相手の意図を理解することはできません。言葉のウラに隠されている心を理解する必要があり、それがまだ7、8歳には難しいようです。

単純なウソを理解しはじめる4歳から、皮肉が分かるようになる9歳くらいまでは、言葉の力と心を理解する力が、飛躍的に伸びる大切な時期です。次のページでもう少し詳しく見ていきましょう。

皮肉の仕組み

例:お兄ちゃんの部屋が散らかっている

“散らかっている”という現実を言わずに、「きれいだ」と非現実を言葉にするのはウソと同じだが、聞き手に伝えたいのは、“散らかっている”という現実の方。ウソより難しい。

ウソの仕組み

例:妹をたたいて泣かせてしまった

たたいて泣かせたのに、「転んで泣いた」と言っている。“たたいた”という現実と、“転んだ”という非現実を同時に思い浮かべ、現実を言うことを我慢する力がないとウソはつけない。

次のページは「うちの子は今どの段階?」

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