小学生ママ

放置できない「小学校低学年の急速な荒れ」

平成28年10月27日に、文部科学省が「平成27年度『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』」と発表しました。その結果は、次の通りです。

これを見ると、荒れが急速に広がっていることがわかると思います。平成18年度から平成27年度の10年間を比較すると、次のようになります。

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もちろん、6年生が一番多いのですが、学年別に比較すると上の表のようになります。低学年の伸びが非常に高いことに気がついてもらえるでしょうか。

平成26年度と平成27年度の1年間を比較すると、次のようになります。

(1) 全体   10808人 → 15154人(40%増)
(2) 1年生   621人 → 1098人(76%増)
(3) 2年生   1017人 → 1804人(72%増)
(4) 3年生   1316人 → 2102人(60%増)

文部科学省が「平成27年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査の手引」を配布し、「暴力行為によってけががあるかないかで分けないこと」「暴力行為の具体例をあげたこと」などもあって、報告件数が増えているのですが、それを抜きにしてもこの増加率は、異常というしかありません。

低学年の問題行動や暴力行為が激増した背景

こうした低学年の問題行動や暴力行為が激増した背景には何があるのでしょうか。私は、主に次の6点が問題だと思っています。

(1) 言葉で自分の気持ちを伝えるトレーニングが不足しているため、
  相手を叩いたり蹴ったりしてしまうということ
(2) ネガティブな感情を受け止めてもらえた経験が少ない
(3) 今の社会は、親たちも、社会も“勉強できる子”“なんでもしっかり
  できるいい子”を求めている
(4) そのため、「そうじゃない子はダメ」という、その価値観の押しつけ
  が起こり、その結果として子どもたちの自己肯定感が低くなり、日々
  のムカつきにつながってしまっている
(5) 人間には、「心のコップ」がある。そのコップにイライラや不満が溜まっている間は良い子でいられるが、コップ
  からあふれ出した瞬間に爆発してしまう。まさに、時限爆弾状態
(6) 「子どもはいつもニコニコしてて、元気で、やる気があって、真面目なはずだ!」という大人の思い込みこそが、
  子どもたちを追い込んでいるのでは?

子どもをどう見るか?
では、子どもをどのような方向で見ていったらいいのでしょうか。それは、主に次の4点だと思っています。

(1) 人間は、必ずプラス面とマイナス面を持っている
(2) 「いい部分も悪い部分も含めてアナタなんだよね、それでいいんよ!」と、すべてを受け止めてあげることに
  よって、初めて自己肯定感が育つ
(3) 褒めればいいというものではない! 褒めるということは、何かができた時が多いので、「できないあなたも
  好きよ!」という目で見てあげる
(4) 根本的な子どもに対する大人の考え方を変え、子どもはこの厳しい世の中で、いろんなストレスを抱えながら
  頑張って生きている仲間なんだという感覚で子どもを見てあげる

自分の気持ちを表現できるよう、子どもの言葉を増やす
また、子どもが自分の気持ちを言葉で伝えるトレーニングが不足していることが、子どもの問題行動につながっています。そのためには、言葉の数を増やすことです。それは、ただ単に、言葉をたくさん覚えさせることではありません。認知科学が専門のGentner and Boroditsky(2001)は、「子どもの初期の言語には物の名前をあらわす名詞が動作をあらわす動詞よりも多く含まれる」「子どもが初期に獲得する語彙は動詞より名詞である」と提起しています。つまり、子どもは名詞を足場にしながら、概念を獲得しているのです。私たちは、なぜ「机」とか「イス」という言葉を獲得するのでしょうか。時には「これは本当に机なの?」と疑いたくなるような物も存在するのにもかかわらず…です。

私たち人間は、「さまざまな机を見て、その共通性を探し出すことで、名詞を獲得していく」のです。つまり、「名詞の獲得は、概念の獲得に他ならない!」のです。概念の獲得が伴わない言葉をたくさん覚えても使いこなすことはできません。

私は、保育園で「子どもの言葉の数を増やす研究」をしました。そのために導入したのが、「あいうえあそびうた」です。最初に、「あのつく ものは なんだろな  あめです ありです あひるです」という歌を教えます。それから、「くのつく ものは なんだろな」と聞き、「〇〇です 〇〇です 〇〇〇です」という二語・二語・三語という形で子どもが歌に合わせて返すことを続けました。

合わせて、「お話づくり」もさせました。3~4人組になり、「(1) バッタが空を飛んでいました。 (2) そしたら、空に虹がかかっていました。 (3) バッタは虹を見ました。 (4) とてもきれいでした。」というように、子どもたちの力で話を創っていくのです。

こうした取り組みは、劇的な変化をもたらしました。5歳児のケースでは、保育士の言うことをよく聞くようになると同時に、子どもたちのケンカやトラブルが減り、いろいろなことを自分たちで決めて行うことができるようになったのです。

言葉の数を増やし概念を獲得していくことで、子どもの言語能力は飛躍的に進歩します。試してみてください。子どもの大きな成長にびっくりするはずです。

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プロフィール

増田修治先生

増田修治先生 
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。
1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

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