入学準備

「努力は才能」なのか

教えて!増田先生 後伸びする年長さんを育てるレッスン

増田先生が見たコドモ

小学校1年生の段階で、すでに理解力に大きな差が生まれてきています。
そして、コツコツと努力する子と、あまり努力しない子とがいます。
「僕なんて、やったってできないもん!」
「難しいことはしたくないの!」
と言い切る子どもが増えています。

また、小学校の子どもたちで、
「Aちゃんは、すごい。でも、私には無理!」
と、他者と比較して自分を評価する子どもも数多くなっているのです。
「あの人は努力できるけど、僕はできないもん!」
などと言う子さえいる始末です。
この差は、いったいどこから生まれてくるのでしょう。

漫画誌に見る子どもの意識の変化

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ある雑誌で「『努力は才能』なのか」という特集がされました。努力とは、才能の不足を補うものだと考えていた私にとって、思い当たることがたくさんありました。

私たちの時には、「何事も努力をすればかなうし、努力しなければかなうものもかなわない」という、少し根性論のようなものが根強く存在していたように思うのです。しかし、その部分が根底から違ってきているような気がしてきたのです。

60年代は、スポ根漫画が流行り、『巨人の星』『あしたのジョー』『アタック№1』などが大ヒットしました。これらの作品に共通するのは、「努力を重ねて成長していく」「頑張ることが身を立てる」といった考え方でした。効率性より根性を重んじたと言っても良いかもしれません。

80年代になると、努力・友情・勝利をテーマにした漫画誌である『週刊少年ジャンプ』が躍進していきます。『キャプテン翼』などのように、努力という側面も描かれますが、友情や戦いのために努力する主人公が人気を集めるようになります。

その後は、機転がきく『名探偵コナン』や、自分は努力せずにカードや召喚獣に能力を任せる作品が定番化し、その流れは『妖怪ウォッチ』に引き継がれているのです。

もっときちんと述べるなら、「努力をしなくてもできる人・努力をあまり苦に思わない人=能力を伸ばす才能がある=努力も才能」という図式ができあがってきているのです。

 

「頭の良い人」のイメージが違ってきている

また私が気になるのは、「頭の良い人」のイメージがずいぶん変わってきているのではないかということです。

2015年2月21日に日本テレビで放映された「世界一受けたい授業」の中に、「現役東大生に聞いた頭が良いと思う有名人」というコーナーがあり、そのベスト50が発表されました。

第1位が「池上彰」、第2位が「林修」、第3位が「ビル・ゲイツ」と並び、第6位に「タモリ」、第21位に「松本人志」、第23位に「明石家さんま」、第27位に「劇団ひとり」などがノミネートされていました。評論家の「田原総一郎」などは第43位でした。

こうしたランクと、東大生のコメントを聞きながら、「頭の良いということのイメージがずいぶん変わってきたな」というのが正直な感想でした。「頭が良い」ということの中に、「多才であること」「他者への切り返しやコメントが素早く、的を得ていること」などが条件として入ってきていました。

それは、今の教育の中で行われている「コミュニケーション能力の高い人間を育てる」という方向性がその価値観を決定づけているような気がしたのです。もちろん、コミュニケーションは大事だと思います。しかし、それと同時に「一人でじっくりと考える力」というのも大事なのではないかと思いました。

2014年12月6日に「努力か? 才能か? スポーツにおける熟達化シンポジウム」が開かれました。エリクソン博士や一流アスリート達が参加しました。その中で、エリクソン博士は、遺伝と環境の関係性の部分で「人類に限界値はない」という話をしています。その話は以下のようなものでした。(要旨)

  1. 人が何かに卓越するためには遺伝と環境の二つが大事
  2. 身長と身体サイズは95%が遺伝で決まる。これらは訓練によって克服できない
  3. 身長や身体サイズなどを除いたほかの特性、例えば、有酸素運動や知能といった特性には、遺伝的要素がわずかだということが知られている
  4. 訓練や環境によって能力は伸ばせる
  5. 訓練によってスイッチの入っていない遺伝子がオンになったり、遺伝子そのものが変わってくることすらある
  6. あらゆる特性に対して、「人類の限界値」のようなものは見つかっていない
私は、特に6.が大切だと思っているのです。人間の遺伝子は、ほとんどが発揮されないまま眠っています。その眠っている遺伝子を覚ますのは、「練習」と「思い込み」なのです。「自分はダメだ」と思えば、その遺伝子は眠ったままになります。逆に、「自分なら絶対できる」と思えば遺伝子はオンになるのです。

「努力できる」というのも才能だとしても、「努力出来るという遺伝子をオンにする」ということだって、出来るのです。そのためには、大人の側の「まなざし効果」が大切です。「今は出来なくてもいつかは出来る」といったまなざしで見てあげることが、子どもの能力を伸ばすのです。また、“コミュニケーション能力”や“機転”でさえ、遺伝子をオンにすれば獲得可能なのです。

増田修治
プロフィール

増田修治先生
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

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